江戸時代の様子を描いた絵図などに、右手右足が同時に出ている姿を目にすることがありますが、右手と右足、左手と左足をそれぞれ同時に出す歩き方をナンバ(歩行法)と呼ばれます。
このナンバとは日本における歌舞伎の動作の1つである六法にみられる、同じ側の手と足を動かして歩く動作です。 元々右手右足が同時に前に出るということは、力を1点に集中させやすいメリットがあることから、日本では古武術や農作業で用いられており、伝統文化においては歌舞伎や祭礼の踊りなども動作を大きく力強く表現することが求められたため、この歩法が用いられた歴史があります。 特に踊りの場合はこの歩法を用いることによって、動作やリズムを整える働きがあることや狭い間隔で並ぶ前後の人の動作を邪魔せずに踊ることができるといったメリットがあり、現代の日常生活では失われた歩法ではありますが、伝統文化や祭礼の踊りとして現在も文化が残り続けています。 またナンバを基本とする身体の使い方は現代になって見直されており、古武術や陸上競技などに応用することが可能でスポーツ科学の観点からも研究が進められています。実際にナンバに類似した動作の1つとして、アルペンスキーやクロスカントリースキー、スキージャンプなどに用いられるテレマークスキーが挙げられます。 実際に中国ではナンバに近い動きは、太極拳などの古武術に取り入れられており、仙人の修行法としても効率の良い動きとして利用されてきました。 実際に太極拳の動作の中には、倒巻肱や野馬分そう、手揮琵琶や単鞭といった同側型動作が多くこの歩法を身につけ習熟できるようになると、右手左足という相反神経支配から抜け出し、人間の動作や表現といった脳の動きを拡大させることが可能であり、技能も向上させていくことができると考えられています。 日常生活でナンバ歩きを習熟できれば、同側動作によって前後の幅が大きく取れるようになり、腰背を軸にした力強い動きが行えるようになります。 この動きは太極拳に必要となる上下相随の動きが匠になるとされ、古武術から踊り、運動様々な面で良い効果を発揮してくれます。 |
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