この記事では、歌舞伎を知らない人でも楽しめるように、名台詞の意味を解説します。
歌舞伎はセリフを理解せずとも楽しむことができますが、その意味を知ることでより一層楽しむことができるはず
「白浪五人男」について知らざぁ言って聞かせやしょう!

知らざあ言って聞かせやしょう〜弁天小僧菊之助

知らねえのか?なら教えてやるよ。俺は石川五右衛門と同じく、七里ヶ浜で泥棒稼業を営んでいる。かつては江の島の弁天様のもとで坊主の見習いとして奉仕していたが、欲に駆られて寺の賽銭を盗み、卑劣な賭け事に明け暮れた。そのうちに夜這いのように泊り客の財布を奪ったり、邪悪な行いはどんどん悪化していった。そして、とうとう江の島から追い出されることとなった。
それからの人生俺は女に変装し、巧みに爺さん(尾上菊五郎三代目)の声色を真似て、あちこちでゆすりたかりの道に身を投じた。その名も、「弁天小僧菊之助」
それは爺さんの息子である初代菊之助に由来するものだ。
波立つ浜辺の真砂が尽きることなく、世には泥棒の種が尽きることもないと言い残した石川五右衛門の辞世の句を思い起こしながら、闇の中で懸命に生きる。そばで人々が喜びを分かち合い、悲しみを背負っている間に、その背後で運命の歯車を回す。
問われて名乗るもおこがましいが〜日本駄右衛門

名を知らしめるのはいささかおこがましいが、それでも構わん。浜松の地で生まれ育ち、14歳の時に親と別れ、泥棒稼業で生計を立ててきた。金は盗むが、人は殺さない。人情に厚いことから、東海道一帯では義賊としての名が轟いていると噂される。
しかし、手配書は全国に広まっていて、いつ逮捕されるかわからない状況が続いている。俺は40歳を超えた今、人生50年という限られた時間の中で生きている。この日本中に知れ渡った盗賊のボスとは日本駄右衛門と呼ばれる男
人生は過酷なものだ。裏切りと孤独、そして逃げるような日々。それでも人々の心に希望と勇気を与えたいと願っている。泥棒の手口は見事で、正義と悪の狭間を行き来しながらも、心に残る名声を築いてきた。
日本全国に知れ渡る存在となり、人々の中で伝説となった。
さて其の次は江の島の〜弁天小僧

さあ、次に語るのは江の島の岩本院で育った話、坊主の見習いとしての日々を過ごしていた。日頃から振り袖を身に纏い、美しい髪を高島田で結び、女装の技術には長けていた。その才能を活かし、男たちを騙して金を巻き上げることが得意技。
油断のならぬ小娘を演じながら、時には正体を見破られ、悪評を受けることもあった。しかし、それにめげずに悪事を重ねていった。やがて八幡様の氏子たちからも疎外され、孤立してしまった。
過去の過ちと罪に塗れた日々を背負いながらも、なおも立ち上がる。
この煌めく白浪の夜に、過去の闇に埋もれた弁天小僧菊之助の姿を垣間見て、何かが揺れ動くことを願っている。
物語は決して華やかではないが、その中には人間の葛藤や絶望、そして希望が息づいている。
続いて次に控えしは〜忠信利平

続いて次に控えているのは、江戸で育った俺の物語だ。幼い頃から泥棒ばかりしていた、無許可で伊勢参りに出かけた頃から徐々に影が薄くなっていった。関西を旅しながら金の稼ぎ方を学び、奈良や京都で高名な囲碁の棋士を装って、裕福な家庭に入り込んでは盗みを働いた。
金を盗むという罪は、身の丈ほどに積み上がってしまった。しかし、奇跡的にも何度も逃げ延びることができた。罪があまりにも多く、身を隠すことすらできないほどの状況になっている。それでも、役人の名を騙ってでも悪事を働くのがこの俺、忠信利平なのだ。
多くの罪を背負いながらも、生き抜く術を見つけた。どれほどの苦境に立ち向かってきたか、その実体験を通じて感じてほしい。忠信利平の名は、恐れられることもあるかもしれないが、自身はただ生き抜くために戦ってきた。罪と苦悩が渦巻く世界においても、人間の心の奥底に光明が差し込む瞬間を見つけてほしい。
又その次に連なるは〜赤星十三郎

次に続くのは、その昔下級武士として武家に仕えていた。主君のためという思いから、心ならずも盗みを働いてしまった。しかし、その盗みの快感は、刃物のサビが削られるように心の奥深くに刻まれてしまった。
花水橋での盗みの様子から、「現代の牛若丸」と称される。人目を欺く姿は、月の影に紛れ見え、夜が明ければ消えていく明けの明星のような存在だ。命が今にも消えてしまいそうな繊細な存在として、私の名は赤星十三郎と呼ばれている。
赤星十三郎の選んだ道は、人間の本質や欲望に触れることができるのだと思う。
赤星十三郎の姿を通じて、あなた自身の内に潜む闇と光を見つめ真実の自己探求を見つけてほしい。
さてどんじりに控えしは〜南郷力丸

最後に登場するのは、性根が曲がりくねった人間として浜で生まれ育った私だ。潮風の強さに負けずに曲がりくねる松の木のように、私も人生の中で歪んだ道を歩んできた。
侠客の世界に身を投じて、闇夜に舞う船盗人として活躍し、恐怖の刃を振りかざして人を脅し、時には命まで奪ってきた。私が背負う罪の重さは計り知れない。悪事の噂は風のように千里を駆け巡り、必ずや最期は磔に晒される覚悟を決めている。哀れみに念仏を唱えるようなことはしない。
そんな心の弱さは捨て去っている。私の名は南郷力丸。
人間の堕落と苦悩を浮き彫りにし、行く末がどうなるのかそれは運命に委ねられている。この瞬間において覚悟を持ち、力強く立ち向かっていく。
南郷力丸の存在が、勇氣と洞察力をもたらすことを願っています。
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