コトドリの鳴き声は森に響く生きた音楽とも呼べるほど複雑で芸術的なものです。
オスは求愛の時期になると長い尾羽を優雅に広げながら自らが習得した数々の音を組み合わせて独自の旋律を奏でます。
その音色は時に琴の調べのように澄み渡り時に森全体の環境音を再構成したような豊かなハーモニーを生み出します。
名前の由来となった「琴」のような音色は特に尾羽を震わせた時に発せられる深みのある共鳴音から来ていると考えられます。
この鳥の驚異的なところは単に美しい声を持つだけでなく周囲の環境音を驚くほど正確に模倣し、それを独自の音楽として再構築する能力にあります。
他の鳥のさえずりから川のせせらぎ時には人間の作る機械音までもを取り入れ、それらをシームレスに組み合わせて全く新しいサウンドスケープを創造するのです。
成熟したオスは20種類以上の異なる音をレパートリーとして保有し、それらを状況に応じて巧みに使い分けます。
若い個体は数年間かけてこれらの音を練習し、独自のスタイルを確立していきます。
特に興味深いのは個体ごとに全く異なる「作曲スタイル」が見られることで同じ種でありながらそれぞれが独自の音楽的個性を発揮します。
求愛の際には鳴き声だけでなく視覚的なディスプレイも重要です。
入念に整えられた塚の上で羽を広げ尾を震わせながら音と動きを完璧にシンクロさせたパフォーマンスが展開されます。
この総合的なアピールがメスを惹きつける鍵となっているのです。
森の奥深くで繰り広げられるこの音楽会は自然が生み出した最も洗練された芸術の一つと言えるでしょう。
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