シュメール粘土板に記された「大気が毒と化した時、神々は皮膚を鎧に変えた」という記述。
マヤの壁画に描かれた「呼吸器のない人間型生命体」の謎 。
ナスカの地下空洞から出土した、通常の数倍の厚さを持つ頭蓋骨(大気圧変化への適応)
呼吸をしない人類。
汚染された環境で繰り返す種族。
21世紀後半、人類は気候変動と産業汚染の制御に失敗し大気はPM2.5をはるかに超える微細な化学汚染物質で満たされた。
外気を吸えば肺が溶け皮膚はただれ、かつての自然環境は死の世界と化した。
生き残った人々は地下都市や密閉ドームに逃げ込み人工的な空気清浄システムに依存するしかなかった。
科学者たちはある結論に至る。
「このままでは人類は滅ぶ。ならば人類そのものを変えなければならない」
2×××年、人類存続を賭けた「ニューブレス計画」が始動した。
遺伝子工学の最先端技術「CRISPR-UV」を使い人間の体そのものを再設計する試みだ。
第一段階では皮膚を完全なバリアへと進化させた。
従来の角質層をナノグラフェン複合膜に置き換え有毒粒子を一切通さない「生体防護服」のような外皮を手に入れる。
呼吸器は不要となり代わりに皮膚に組み込まれた藻類遺伝子が光合成で酸素を生成する。
口は塞がれ、かつて食事をしていた人々は腕に貼った栄養パッチから直接グルコースを吸収するようになる。
感覚器官も根本から変わった。
目や鼻や耳は有害物質の侵入口となるため、それらは廃棄され新たな生体センサーが開発された。
空気中の化学物質を触覚で識別する「分子感知層」可視光以外の電磁波を捉える「全周波視覚」かつての五感とは異なるが、むしろ環境に最適化された感覚だ。
排泄システムも革新された。
尿道や肛門は封鎖され代わりに皮膚から老廃物を結晶化して排出された。
こうして生まれた新たな人類は「ホモ・セパラティス(仮名)」と呼ばれた。
彼らの外見はかつての人類とは大きく異なる。
無毛で光沢のある肌は光合成のためであり顔にはかつての「目」や「口」に相当する器官はない。
代わりに顔面全体が微妙に色を変える生体ディスプレイのようになっており感情や外界の情報を光のパターンで表現する。
かつての人類が「呼吸」や「食事」という概念に縛られていたことを彼らは奇妙に感じる。
22世紀半ば、ホモ・セパラティスはついにドームの外へと歩み出した。
かつての地上世界はまだ汚染されていたが彼らには何の苦痛もない。
かつての人類が大気を「吸う」必要があったように、彼らは太陽光を「浴びる」ことで生命を維持する。
彼らにとって旧人類の生き方はもはや原始的なものに映る。
一部の保守派は「これは人間の終焉だ」と叫んだが進化論的に見れば、これは生命が環境に適応した当然の結果だった。
「人間とは何か?」という問いの答えは時代とともに変わっていく。
ホモ・セパラティスは人類の終わりではなく人類の「次の姿」
それはトーラスの如く人類は繰り返しているのかもしれない。
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