ラムセスの墓-5番,6番
王家の谷(Valley of the Kings)は、エジプトのルクソール(古代テーベ)にある古代エジプトの王族の墓地群です。
新王国時代(紀元前16世紀から11世紀頃)のファラオや貴族たちが埋葬されており、世界で最も有名な考古学遺跡の一つです。
古代エジプトの神々の中でも、特にユニークで興味深い存在がケプリ(またはケペラ)です。
スカラベ(フンコロガシ)として象徴されるこの神は、再生と太陽のサイクルを司り古代エジプト人の死生観や自然に対する深い洞察を反映しています。
今回は、ケプリの謎に迫りその側面を探ってみましょう。
ケプリの名前とその意味
ケプリのエジプト語名「Ḫpr(j)」は、「形を変える者」や「存在になる者」を意味します。
この名前は、再生と変容の神であることを示しています。
ケプリは、太陽が毎日再生するように、生命と死のサイクルを象徴する存在とされます。
スカラベとケプリの深いつながり
ケプリがスカラベとして描かれる理由は、スカラベの生態にあります。
スカラベは、糞を転がしその中に卵を産み付けます。
この行動は、古代エジプト人にとって生命の創造と再生のプロセスそのものに見えました。
さらに、スカラベが糞玉を転がす様子は太陽が空を横切る動きに似ていると考えられました。
このことから、ケプリは太陽の再生と結びつけられたのです。
スカラベの行動と神話のリンク
スカラベが糞玉を転がす=太陽が空を移動する。
糞玉の中から新しい生命が生まれる=太陽が毎日再生する。
ケプリと太陽神ラー
ケプリは、太陽神ラーと密接に関連しています。
ラーは昼の太陽を象徴しますが、ケプリは特に「朝の太陽」を表します。
夜の世界を通過したラーが再び現れる瞬間、つまり日の出の力を象徴するのがケプリです。
このため、ケプリは「再生の神」として崇拝されました。
〜太陽の三形態〜
ケプリ//朝の太陽(再生と誕生)
ラー//昼の太陽(生命と力)
アテン//夕方の太陽(沈みゆく力)
ケプリと来世信仰
古代エジプト人は、死後の世界での再生を強く信じていました。
ケプリは、この再生のプロセスを助ける神として重要な役割を果たします。
ミイラの装飾や墓の壁画には、ケプリの姿やスカラベのシンボルが頻繁に登場します。
これは、死者が来世で再生し永遠の生命を得ることを願ったためです。
スカラベ・アミュレット
死者の心臓の上に置かれるスカラベ形の護符は、「心臓スカラベ」と呼ばれました。
これは、死者が来世で審判を受ける際に心臓が軽くなるように願う意味が込められています。
スカラベの護符は、生者も身につけ再生と保護のシンボルとして活用されました。
ケプリの芸術的表現
ケプリは、古代エジプトの芸術において多様な形で表現されています。
1. スカラベの姿
最も一般的な表現で、護符や彫刻として広く作られました。
2. 人間の体にスカラベの頭
人間の体にスカラベの頭を持つ姿で描かれることもあります。
3. 太陽円盤を転がすスカラベ
太陽の再生を象徴する姿として、壁画や彫刻に登場します。
ケプリの現代的な意義
ケプリとスカラベのシンボルは、現代でもエジプト文化の重要な一部として認識されています。
スカラベの護符は、お土産として人気があり再生や保護の意味を込めて身につける人も沢山います。
またケプリの物語は、古代エジプト人の自然観や死生観を理解する上で重要な手がかりとなります。
まとめ
ケプリは、古代エジプトの再生と太陽の神としてスカラベの姿で象徴されるユニークな存在です。
その背景には、スカラベの生態と太陽の動きを結びつけた古代エジプト人の深い洞察があります。
ケプリの物語は、生命のサイクルと再生への願いを現代に伝える興味深いテーマですね
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