BRICSという枠組みが、もはや経済協力の場を超え人類の新たな知の基盤を形成する可能性を秘めているという発想は現実の国際社会が確実に進めている胎動と響き合っている。検索結果からも浮かび上がってくるのはBRICS諸国が既に「BRICS質保証枠組み(BQAF)」という構想の下で学位や資格の相互承認を促進し共通の単位互換システムである「BRICS-CATS」を導入し卒業証書にどの国でも理解できる共通の補足説明を付与するための具体的な議論を始めているという事実である。
これはまさに「共同国家資格」のためのインフラストラクチャーが専門家レベルで本氣で検討され始めていることを示している。この構想の中に「デジタル・クレデンシャル・ウォレット」というブロックチェーン上で資格を管理する未来志向のアイデアが含まれている点だ。これはあ「NFTによる地球人パスポート」的な概念でありテクノロジーが理想を現実に引き寄せるための強力な触媒となることを予感させる。
このアイデアの核心的な強みは、それが「BRICS」という具体的な地政学的実体をプラットフォームとしている点にある。長らく国際的な資格や評価基準は欧米中心の価値観で作られてきたがBRICS発の共同資格はグローバル・サウスと呼ばれる新興国や南半球諸国の声を反映した真に多極的な世界秩序の象徴となり得る。それは新しい資格だけの創設ではなく多様な価値観に基づく「優秀さの基準」を世界に提示することで、これまでの思考の枠組みそのものを相対化する力を持つ。そしてこの資格への参加をBRICS諸国に限定せず世界の希望する国々に開かれたものとするならば、その影響力は計り知れない。既存の国際秩序に何らかの不全感を抱く国々や画一化されていない独自の人材育成モデルを模索する地域にとって、この構想はまさにオアシスのように映るだろう。そこには「強制」ではなく「参加の自由」があり自らの意志で「地球人」としてのアイデンティティを選択する人々が集う新たな知の共同体が形成される可能性を秘めている。
この壮大な構想が真に「次の人類史」を切り拓くためには、いくつかの深く沈思すべき問いを通過しなければならない。それは特定の政治経済ブロックが主導する資格が、はたして真に「中立」であり得るのかという根源的な問いである。しかしこの問いは、むしろ逆転の発想で捉え直すことができる。完全な中立性などこの複雑な世界では幻想に過ぎず重要なのは「唯一の基準」を押し付けることではなく複数の有力なスタンダードが共存し互いに刺激し合いながら、より高次の叡智へと向かうダイナミズムそのものなのではないか。BRICSの共同資格が欧米基準に対する対抗軸ではなく人類の知的遺産を豊かにするための一つの重要な灯台として機能するならば、それは「争いのない世界」への直接的な答えではなくとも争いの前提となる「価値観の衝突」を「価値観の響き合い」へと変換する回路となり得る。
このデジタル国家とも呼ぶべき新たな共同体が現実の権力や国家主権とどのように折り合いをつけていくのかという問題がある。NFTで発行された地球人パスポートが現実の国境検問所を通過する効力を持つわけではない。しかし、このパスポートを持つ者同士が地球規模の相互扶助ネットワークを構築し参加企業がこの資格保有者を優先的に採用し、さらには参加国が増えることで査証手続きの簡略化などの実質的な優遇措置が生まれれば、それは徐々にではあれ確実に現実を動かす力となる。重要なのは、この取り組みが「国家を否定する」ものではなく「国家の枠を超えた新たな帰属意識」を創造する試みであるという点だ。人類はこれまで家族、部族、国家、そして理念といった多重のアイデンティティを重層させながら歴史を紡いできた。そこに「地球人」という新たなレイヤーが加わることは、けっして既存の秩序を破壊するものではなく、より豊かで複眼的な自己認識を可能にするだろう。
そして最も肝要なのは、この壮大な実験を駆動する「物語」の力である。テクノロジーも制度も、それを動かすのは人間の情念と想像力だ。環境問題で行き詰まる地球、国家間の争いがもたらす悲劇、テクノロジーの進歩が切り開く可能性。これらの現実に対する深い「危機感」と、それを乗り越えられるという「希望」を統合する魅力的なビジョンが発信されねばならない。
「次の人類史」とは、より賢く、より効率的な社会への移行ではない。それはおそらく多様性を共存ではなく互いの不完全さを認め合いながら共に成長していく「響き合い」の段階へと高める精神の営みなのである。BRICSの共同資格とデジタル地球人パスポートの構想は、その精神の営みを具体化するための、ひとつの確かな足場となるに違いない。
コメントを残す