「武」という字が「戈(ほこ)を止める」と書くように本当の強さとは争いを終わらせ武器を収めることだ。 pic.twitter.com/4uHpIyJRUD
— 能𠀋 健介 (@blow_kk) June 4, 2025
1479年、イタリアのとある工房で子牛の皮を漉いた最高級のヴェラムに金箔が貼られていた。
羽ペンを持つ写字生は息を殺し細密画を描く職人はルーペ越しに目を凝らす。
こうして生まれたのは、ユダヤ教の祈祷文から世俗の詩、医学知識までを網羅した「文化の百科全書」それがロスチャイルド・ミセラニー
当時のイタリアでは、ユダヤ人は特定区域への居住を強制される一方、金融や医学で不可欠な存在だった。
この矛盾を生き抜いたエムマヌエル・ベン・ヤコブという富裕なユダヤ人銀行家が私財を投じて制作を依頼したと言われる。
ページを開けば過越祭の祈りと隣り合わせに当時流行した恋愛詩が並ぶ。
文字そのものが鳥の形に組まれ、余白には職人の遊び心がこっそり描かれている。
アフガニスタンから輸入したラピスラズリの青と本物の金箔が差別と迫害の時代にあってなお消えぬユダヤの栄光を宣言していた。
19世紀、ナポレオン戦争の混乱を金融で支配したロスチャイルド家の手に渡ると、この写本は新たな役割を担う。
彼らはユダヤ文化の保護者として写本を収集しながら、一方で戦争融資で富を膨らませた。
金箔の輝きの裏側でページをめくる指先には資本の匂いが染みついていた。
第二次世界大戦中、ナチスはユダヤ人の書物を徹底的に破壊したが、この写本は奇跡的に生き延びた。
現在エルサレムのイスラエル博物館に安置されるその姿は600年の時を超えて私たちに問いかける。
金箔の文字は「守れ」と囁き
男の落書きは「生きよ」と笑う
人類が犯した過ちと、それでも受け継がれた美が、ここには共存している。
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